5月28日、「インターナルコミュニケーション・デイ 2025 Summer」(主催・ヤプリ)が開催され、西日本旅客鉄道 デジタルソリューション本部 DX人財開発室 室長・高本浩明氏が登壇(肩書は当時)。コロナ禍に始まった「働き方のDX」が、いかにして従業員の意識を変え、企業文化を揺り動かしたのかについて語った。
ヤプリと宣伝会議が発足した「インターナルコミュニケーション研究会」は、イベント「インターナルコミュニケーション・デイ」を開催。事例講演として、JR西日本 DX人財開発室 室長・高本浩明氏が、働き方のDXに取り組んだプロジェクトを紹介した。
働く人たちの笑顔を増やすDX
コロナ禍による鉄道需要の減少を受け、2020年に「デジタル戦略」を策定したJR西日本。DX推進により、事業の構造改革のみならず、従業員体験(EX)の再構築にも挑んできた。
DXによる働き方改革を担ってきた高本氏は、現場の声を集め、課題を抽出するところから開始した。そこで見えてきたのは「情報囲い込み文化」「紙よこせ文化」「すごろく文化」などの慣習だ。デジタルによる効率化で、考える時間や仲間とコラボする時間を増やし、「笑顔が生まれる働き方」で仕事の質を上げていこうと「Work Smile Project」を立ち上げた。
同プロジェクトでは「業務改革の3つの柱」を掲げている。1つ目は「コミュニケーションの進化と活性化」。デジタルツールをフル活用することで、リアルでのコミュニケーションも活性化するようにした。2つ目は「意思決定プロセスの見直し」。縦割りで硬直した組織を脱し、オンライン上でつながることで、部門を超えたチームワークや、素早い意思決定ができる仕組みづくりに取り組んでいる。3つ目は「当然化した無駄の排除」。スケジュール調整や資料印刷といった無駄にメスを入れた。
エバンジェリストがプロジェクトの主役に
改革推進の鍵となったのは、現在約2000人いる「エバンジェリスト」の存在だったと高本氏は振り返る。各職場から実行力の高い従業員をエバンジェリストとして選抜。DXツールを導入する際に生じる問い合わせなどに対応する仕組みをつくったところ、職場の悩みに向き合いながら、自ら行動を起こす動きが見られたという。
エバンジェリストは、プロジェクト事務局と共に、デジタルツールの使い分けガイドラインを策定。アンケートやログデータをもとに進捗を確認しながら、個々の職場で生まれたDXの好事例を水平展開している。「相互扶助」のマインドを重視しており「DDP(どうぞどんどんパクッてください)」という社内用語も生まれるほどだ。
同時にプロジェクト事務局は、経営陣に対して働きかけ、役員のスケジュール公開や効率的な会議の推進といった変革を実現している。
講演では、JR西日本の「働き方のDX」実践にあたり、どうやって「理想」を「現実」にしていったのか、「現場」で何が起きたのかを振り返り、解説した。
従業員同士がつながり、個が輝く
こうした変革は、従業員のモチベーションにも好影響を与えている。
例えば、台風接近の状況がリアルタイムに共有され、各地域で指示を待たずとも自発的な対策が広がっていき、その取り組みを称えあう様子が見られている。台風などの異常時におけるチームワークは、従来から同社の鉄道事業の強みであったが、オンライン上での素早い意思決定が実現したことで「守り抜きたい企業文化を磨き上げることにつながった」と高本氏。
また、従業員が自身で開発した業務効率化ツールをおよそ2000人の社内コミュニティで共有しており、様々な部門の従業員から感謝されたり、業務で欠かせないツールとなったりしている。「部門の一員としてではなく一個人として、組織図を超えて従業員同士が偶発的につながり、刺激しあうことで、個人の成長や組織への貢献意識が育まれている。DXによって個人が輝き、組織全体の熱量につながる、そうした『成長させたい新しい文化』が生まれている」と高本氏は言う。
「Work Smile Project」を通じて、大切にしてきた企業文化を磨いていくこと、その上で、新しい文化を成長させていくこと、その両輪で、働く人の「笑顔」と「誇り」を生み出していきたい考えだ。

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