博報堂DYメディアパートナーズ統合の背後にある、最大の目的とは?
━━社長就任に際して、どのような方針を掲げましたか。
博報堂と博報堂DYメディアパートナーズが統合する、特別なタイミングで社長を仰せつかりました。まずは統合した意味を十分に発揮し、統合したからこそ新たに提供できる価値を明確に示していく必要があると考えています。
私たちはこれまで“広告業”を生業とし、コミュニケーションをつかさどる事業を通じて、得意先や生活者に価値を提供することで、成長してきたわけです。しかし昨今は得意先の事業目標に寄り添う中で、得意先の抱える課題が複雑化・複層化しているのを感じます。私たちが提供すべき価値も、アップデートが求められているのです。
リアルな場や体験と、デジタル上の体験と、企業やブランドと生活者の接点が多様に広がる現代においては、かつての広告会社がしてきたような、広告やメディアという限られた生活者インターフェースを中心とした提案だけでは、解決できる課題が限定的になってしまいかねません。
複雑化・複層化した課題に解決策を導き出すためには、デジタルを中心としたデータ、なおかつ各種の生活者接点で得られるデータを統合し、活用するマーケティングを強化する必要があるのです。それによってフルファネルのマーケティングをサポートする体制を再構築する。博報堂DYメディアパートナーズ統合の一番の目的は、ここにあります。
広告を中心とした狭義のマーケティングに閉じず、得意先の事業に伴走できるフルファネルのマーケティングをサポートできる体制をつくる。そのためには領域の拡張に加えて、各種施策の精度の向上も必要です。まずは最初の2年でその両輪に注力していきたいと考えています。
私たちは、近年「生活者インターフェース市場」という概念を打ち出してきました。生活者インターフェース市場とは、デバイスやデジタルテクノロジーなどの進化で、あらゆるものと人とがつながり、生活者の新しい接点、つまりはインターフェースが生まれることを指します。
かつての広告会社のビジネスにおいて、生活者インターフェースとはマスを中心としたメディアに限られていた面もあったかもしれません。しかし、改めて「生活者発想」という博報堂の原点に立ち返った際、生活者インターフェースとなりうるものは、メディア以外にも広がっていますし、それらを統合的に組み込んだフルファネルのマーケティングが必要とされていると考えています。
名倉 健司(なぐら けんじ)氏、1967年埼玉県生まれ。慶應義塾大学出身。1991年4月、博報堂入社。第十二営業局長、執行役員、常務執行役員、取締役常務執行役員を経て、2025年4月より博報堂 代表取締役社長に就任。